認知行動療法は本当に治療に役立つのだろうか?
また、それで障害は緩和されるのか?
たとえば、何かの障害や病気のために認知行動療法の名を正式に聞くことなく、治療に取り入れた人も多いだろうと思う。
パニック障害、対人恐怖症、強迫神経症など、何かに対して強い抵抗のある人に認知行動療法は有効性が高いと言われる。しかし、抵抗性の高い障害ほど認知療法をツラく思う確率も高いため、成功率は低くなる。
それでも、やる価値はあると私は言いたい。
私が経験から思うことは、薬物治療も認知療法も、副作用があるほうが効果が高い。
それは思考を思い切り変換させられるからなのではないかと思います。習慣や惰性をなぎはらう威力がそこにはある。
そして、大変なほど、成功したときの達成感と自己コントロール感が強い。
つまり、人は意識によって成り立っていて、それが体の症状を作用するのだと思えます。
認知行動療法は「自分をコントロールできるという自信」そして「私は治るのだ」「私は変われるのだ」「私はできるのだ」という自己肯定感と達成感につながる。
私は認知行動療法について知っていながら、真剣に取り組んだことがなかったものの、薬の副作用の不眠から始まり、結果的に認知行動療法の流れに沿うことになった。
ここでは、睡眠障害に認知行動療法がおおいに有効だということを私の経験談で伝えていきます。
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目次
私の認知行動療法の始まり
私は幼少から睡眠に対する問題を抱えてきた。
私の主要な問題は「入眠困難」と「起床時のとてつもないダルさ」でした。
はたして、中学生で朝からとんでもなく疲れていることなんてあるだろうか?
「起床時のとてつもないダルさ」は、入眠困難ではなく「眠りが浅い」ことを示していました。
しかし、原因はわからず、私はただ自分が弱い人間なのだと思っていたのです。
私の睡眠障害については別記事にて紹介していますので、よければ見てください。
⇒私の非24時間型睡眠覚醒症候群の苦悩と治療
さて、睡眠治療を開始した後いろいろな薬を試し、ある薬の副作用として服用3日目から中途覚醒が増えました。これは、他のさまざまな睡眠薬でも同じ副作用が出ました。
しかし、時を同じくして入眠にかかる時間が1~2時間かかっていたのが改善され、30分で眠れるようになっていました。
そして、5日目。
2時間で目が覚めたとき、非常に頭と目が冴えていました。
そのまま眠れず、超不眠が2日続き、3日目の朝は「ツライ。もう薬をやめよう」と思いました。
日中のあまりの眠気に「もうダメだ!」と本気で思っていたところ、別記事に書いたようにそれは薬の副作用であり、慣れると収まるだろうという知識を得て、もう少し頑張ることにしました。
すると、服用開始から約8日目に、4~5時間眠れるようになりました。
その頃、従来ずっと記録していた「睡眠・覚醒リズム表」に加えて「睡眠日誌(認知行動療法用)」も記録を始めていました。
ここから、私は知らず知らずのうちに、次の章で紹介している「睡眠制限療法」を開始していたのです。
認知行動療法の開始(超不眠になった日を起点として)から、1週間後には眠りに入るまでの時間が10分になっていました。
現在はまだ中途覚醒があるものの、平均6時間半の睡眠を取れていて、日中のパフォーマンスも改善しています。
睡眠障害に認知療法を試してみる
私の経験で思うのは、認知行動療法とは「自分をコントロールできる」「私は治るのだ」「私は変われるのだ」「私はできるのだ」という自己肯定感と達成感を得ることと、睡眠に対する意識を変えることを目的としたものであるということです。
実際に私も睡眠記録をしっかりつけることで、自身の睡眠問題に取り組んでいるという自信と、もっと寝ていたいと思うよりも問題に取り組む意識が高まったため、日中に行動することが増えました。
また、実際に「眠れない」と思う日が以前は週に4回はあったのに、今や週に1回程度です。
日中に行動することで日の終わりには達成感ができ、自分をコントロールできるのだということを学びました。
今から紹介する認知行動療法は、記事下部で紹介する「睡眠障害に対する認知行動療法 ―行動睡眠医学的アプローチ―」を参照させていただきました。
入眠困難・睡眠維持困難・早朝覚醒に対する「睡眠制限療法」
この療法は、睡眠量を制限することで睡眠欲求を強め、夜間の睡眠傾向を高める最も信頼できる方法の1つである。
つまり、何日も睡眠を少なくされると極度に眠くなり、夜の寝つきを改善し、中途覚醒を少なくし、眠りを深くする効果がある。
睡眠へのコントロールを厳しく行う「睡眠制限療法」は、私のような概日リズム障害の人間にも有効だと考えられる。
重大な副作用(極度の日中の眠気と睡眠を制限されることに関するイライラや、抵抗など)があったとしても、短期間で不眠状態を改善させるのは間違いない。
ただし、日中の作業効率(機能)を良くすることには必ずしもつながらないので、治療で十分な睡眠の質を確保してから、日中をより良く過ごすバランスを見出す必要がある
※この療法は初期には日中に異常に眠くなるので、車の運転を仕事にしている人は行ってはならない。また、危険を伴う機会を扱っている工場勤務、眠りによって症状が悪化する病気を持っている人もリスクが高いので行うべきでない。
・実践の仕方
①1~2週間の睡眠記録を参考に、睡眠効率によって、臥床時間(寝床に入っている時間)を決める。
睡眠効率(%)=実際の睡眠時間トータル ÷ 寝床に入っていた時間
※1~2週間の平均睡眠トータル時間、寝床に入っていた平均時間を参考にする。
・睡眠効率90%以上の場合 ・・・寝床に入っている時間を平均から15分延長する
・睡眠効率85%以下の人 ・・・寝床に入っている時間を、平均睡眠時間まで減少させる
・睡眠効率85~90%の人 ・・・平均の睡眠時間・寝床に入っている時間を維持する
※寝床に入っている時間は最低5時間は確保する。
※精神状態によって、寝床に入っている時間を30分延長する程度はよしとする。
あまりにも寝床に入る時間を制限され、精神的負担が大きいことを考慮する。
②起床時間は、平日の最も早く起きなければいけない時間を設定する。
土日もだいたい同じ時刻に起きる。昼寝は禁止。
参考例)入眠に30分かかり、早朝覚醒時間が長い(朝方は45分間ほど、目が覚めている)
平均的な就床~起床時刻 午後0時~7時
平均の臥床時間 7時間
平均の入眠にかかる時間 30分
平均睡眠時間 5時間45分
平日の起床時間 7時
・最初の睡眠スケジュールの設定
設定した臥床時間(寝床に入っている時間) 5時間45分
起床時間 7時
就床時間 午前1時15分
※もし、夜間の最初の3分の2がベストな睡眠だという場合は、イレギュラーだが、
起床時刻を通常の起床時間よりも早い時間に設定する必要がある。
就寝時間 午前0時
起床時間 午前5時45分
※また、寝床に入ってる時間は、睡眠が深くリフレッシュする体験が最も得られそうな時間帯を
考慮するほうが認知療法の継続を促進するため、下記の対処も1つの方法である。
就寝時間 午前0時30分
起床時間 午前6時15分
簡潔に言うと、不眠だと感じている人は実際の睡眠時間より寝床に入ってる時間は長い。よって、寝床に入ってる時間を実際の睡眠時間まで減らすということになる。
実際に行ってみると、寝つきが悪い人は睡眠時間が減ることになるので非常に眠い。
最初の3日~1週間はとても眠い。しかし、そこを耐えていくと寝床に入っている時間のほとんどを眠れるようになってくる。
そして、2週間ごとに過去を振り返って、睡眠効率を計算し直す。
時間制限法実行後の2週間ごとの平均時間を参考に
・睡眠効率90%以上の場合 ・・・臥床時間を15分~30分延長する
・睡眠効率85%以下の人 ・・・さらに臥床時間を15分~30分短縮する
・睡眠効率85%~90%の人・・・そのままの臥床時間を維持する
睡眠が改善していないと、さらに寝床に入る時間を減らすことになるのだが、2週間も実行するとほとんど変化を感じられるだろう。
その他の認知行動療法の記事もあげたので、興味のある方はどうぞ⇓
⇒【関連記事】睡眠障害の認知療法はこんなにある!自分に合う方法を探す
私の睡眠時間制限法 実験
私の2週間後の設定時間は以下の通り。
平均睡眠時間 6時間30分(睡眠効率83%~85%を推移)
就寝時間 22時30分
起床時間 5時
私は非24時間型睡眠覚醒症候群のリズム障害なので、寝る時間と起きる時間は毎日ずれていく。しかし、投薬治療によって、朝は3時~5時の間に目覚めるようになってしまったので、起床時間を先に設定することにした。
3時ではあんまりだと思ったので、5時に設定した。
睡眠時間は、薬の副作用である中途覚醒を挟んでいても、結果寝れたトータル時間の平均が6時間半と出たので、5時に起きるなら、睡眠時間確保のために22時~22時30分の間に寝ることを目標とした。
そして現在はどうかと言うと、朝5時起きは設定どおり起きれているが、寝る時間が安定していない。しかし、入眠にかかる時間は10分とすぐ寝られるが、リズム障害のなごりか、なかなか22時に眠くならないようになってきた。
5時起きは構わないので、できれば7時間程度寝れるところまで目指したい。
7時間まで睡眠時間を伸ばすには、睡眠効率を85%以上にしなければならない。
よって、今後2週間は下記の設定でトライしてみることにした。
平均睡眠時間 6時間
就寝時間 23時
起床時間 5時
このような睡眠生活を送っている人はいるだろう。
しかし、概日リズム障害であり、過去には10時間の過眠タイプであった私には厳しいものに思えた。
しかし、意外と日中の眠気に耐えれるのは、睡眠問題に自分で取り組んでいるという達成感と薬の効果が大きいだろう。
私が思うに、軽度の睡眠障害や不眠であるなら薬は必要ないかもしれないが、重度の睡眠問題を抱えているなら私のように薬との併用を考えるのも手だろう。そのほうが効果は出やすい。
しかし、薬だけだと将来に渡って持続性がなく(薬は効かなくなっていく)、認知療法で睡眠習慣を体に覚え込ませることが、持続的に安定した睡眠生活への基盤となると思う。
薬物治療と認知療法について
認知行動療法を行おうとする人、または医師から勧められた人は、すでになんらかの薬を飲んでいる可能性が高い。おそらく睡眠薬か抗不安薬が寝る前に出ているだろう。
認知行動療法は先でも述べたように、将来に渡って睡眠問題を改善するのに役立つ。しかし、薬だけでは持続性は少ない。
薬は体に慣れてしまうと効かなくなってくるのだ。
薬なしでは寝られないというふうになってしまうと、精神的依存になるばかりか、薬を止めることになったときに睡眠問題にまた悩むことになる。
認知行動療法は、薬を止めるときに睡眠が問題とならないようにすることにつながる。
うつ病などと違って、睡眠障害には認知療法はかなり有効だと私は実感している。
まず、眠いのは仕方ないと割り切れば、起きて行動できる時間が増えたためにいろいろなことができるようになった。
(しかし、一定の睡眠時間を取れるようになるまでは、いまだ午後から夜にかけて非常に眠い・・・。)
ただ、私は難治症と言われるリズム障害なので、一般の人とはまた違っているかもしれない。使っている薬も睡眠薬や抗不安薬ではないので、作用も違う。
このあたりについては、自身の主治医と薬について相談しつつ、睡眠問題の認知療法については睡眠専門の主治医を別に持つことをオススメしたい。精神科医も得意な分野や慣れているものが違う。とくに睡眠専門の精神科は、睡眠事例を多く扱うので知識や経験値が豊富だ。
「病院を増やしたら、結局、さらに薬づけになるんじゃないの?」と思うかもしれない。
しかし、同じ症状で2つの病院にはかかれないが、睡眠治療は独自の領域だ。
違う病院の医師の話を聞くことができ、新しい視点での薬を試す可能性にもつながれば、
「あれ、同じ作用の薬が出るなら、コレはいらないんじゃないの?」と薬を減らす可能性が増える。
医師によっては、薬をあまり飲ませたくない先生がいて、そういう先生は「これは減らしましょう」と思い切ったことを言ってくれる。
私の別記事でも取り上げているが、薬については医師を信頼してきちんと出された薬を飲むことが大事だが、自分の体について一番わかるのは自分なのだ。精神的な苦痛やツラさは医師に完全には伝わらない。
だから、自分でも知識を持ち、医師に質問や提案を自分からできる知恵をつけることが大事だと伝えたい。
⇒【関連記事】抗うつ薬は本当に必要なのか? 自分で決断する大切さ
睡眠治療を開始して、私はパニック障害で服用していた抗うつ薬を減薬の上、停止した。
抗不安薬も漢方薬に切り替えた。これは独断でやったが、医師には変えた際の報告はしている。
精神科では多くの薬が出されることも多い。それはその医師のやり方によるが、多くの薬は初期にはとても有効だ。症状を一気に抑えてしまうほうが、患者の苦しみを減らし、安定する時間を増やす。
問題は、慢性期に入ってからどこまで薬を飲むかだと私は考える。
私は薬を基本3つ以上にしたくない。
(その分、プラスアルファとして頓服の抗不安薬を持つことにした)
それはあまりに多く飲むと、どれが効いているのかわからなくなるからだ。
3つぐらいだと、1つを抜いても悪くなりすぎることがなく、それぞれ感覚を試せると私は考えている。
薬の調整に加えて、認知療法を試すことは忍耐力が必要だが、必ず効果はあると信じて頑張ってもらいたいと思う。
※私が独断で行う調整や減薬は私の価値観なので、参考までに聞いてください。
薬を止めることには副作用が伴います。必ず主治医のアドバイスをもらいながら減薬や停止を行ってくださいね。
認知行動療法から生まれる精神的自立心
ここまで書いて、認知行動療法は私に限って有効だったといえるが、それが全ての人に当てはまるかどうかはわからない。
これは飲んでいる薬、症状、重症度によっても違う。
けれど、実際の結果以外に認知行動療法には、違う側面でのメリットがあることも伝えておきたい。
自分の状態を把握し、状態を観察し、対応策を考えることはたしかに医師がやってくれる。それでも、医師にすべてがわかるわけがない。
本当に自分に必要なものは自分でわかるはずだ。
※重度の精神病の人には当てはまらない。
本人の判断力がない場合は、家族が判断することになる。しかし、その場合でも医師ではなく家族でしか感じられないものがあるはずだ。
それは、その人の今までの人生や、どういった気質を生まれながらに持っていたのか、本当はどういう人なのか。
どんな治療も患者がそれを受け入れなければ、効果は発揮されない。
プラセボ効果というのをご存じだろうか。
薬ではない小麦粉などの白い粉を、薬と思って飲んだ患者は、通常なら変化はないはずなのに、症状が少し改善するということが多くの林亮実験で示されているのだ。
そう、つまり意識で効果は変わる。
認知行動療法にもそれは当てはまると思う。
嫌々やっても、仕方なしにやっても効果は出ない。
信じて、真剣に取り組むことが、効果を高めるのだ。
そして、その一連の行為は、自分を把握することにつながり、自己を見つめ直すことにもつながる。これは病気や障害と真正面から向き合うことであり、治療を自分の意思で行っているという自己肯定感にもなるのだ。
もし、認知療法がうまく行かなくても、病気に向き合う姿勢が変われば、医師への診察時の対応も変わり、違う方法を自分から打診していくこともできるようになる。
治療というのは、医師と患者の共同作業なのだ。
医師だけが試行錯誤するよりも、患者も同じように向き合い考えることは、必ず治療に光が差す瞬間が来るということを、最後に強調しておきたいと思う。
【この記事の参照文献】:※専門書になるので、初心者には読みづらい本となります。
睡眠障害に対する認知行動療法:行動睡眠医学的アプローチへの招待 | ||||
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