パニック障害は今や特殊な障害ではない。
芸能人でも公表する人が増え、パニック障害という言葉は一般人にも知られることとなった。昔は「心臓神経症」と呼ばれ、その名が示す通り神経症の一種である。ちなみに、うつ病は精神病の分類である。
パニック障害の症状は、とてもツライということは当人にしかわからない。そして、発症した初期段階や、人によっては重症になるまでそれがパニック障害であると気付かない場合が多い。
さて、ではパニック障害のつらい症状とはどんなものか?
そして、どんな苦労があるのか。
パニック障害初期の頃、インターネットでたくさんのサイトを見ましたが、症状や治療についてはたくさん見れたものの、リアルな体験談は少なかった。ここでは私の実体験を交えてお話したいと思います。
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パニック障害のつらい症状
以下が、よくある症状(他の精神疾患や神経症でも起こる)と、パニック発作ならではの症状です。
- 一般的に自覚しやすい症状・・・胸の痛みや不快感、窒息感、めまい・ふらつき・気が遠くなる、冷感・ほてり・悪寒、吐き気・腹痛など
- パニック発作・・・動悸や発汗、手足の震えなどの症状ののち、理由のない強い不安(死への恐怖、正気や自我を失うことへの恐怖)が起きる
- 予期不安・・・また、パニック発作が起こるのではないかと恐れる
- 回避行動(広場恐怖症)・・・特定の場所や状況にて発作が起こるため、それを避けるようになる
ここからは私が体験した症状について詳しく説明します。
・後頭部がきゅうっと絞られるような痛みと、「はあっ、はあっ」という呼吸の乱れ、胸の違和感(動悸?気持ち悪さのような)
この時は初めての発作で、飛行機の着陸態勢時だったのですが、頭の痛み?が耐えられないくらいだったので、「着陸まで持たない!」と本気で思いました。当初はパニック障害のことは知らなかったので、仕事の疲れとストレスから気圧の変化に耐えられなかったのだろうと思って結論づけたのを覚えています。
・手の震え、冷感(足がとても冷たいと感じて、温度がない、足に血が巡っていないと怖くなった)、胸の違和感(苦しいというか気持ち悪いというか、ドキドキがすごいという感じ)
これは、パニック障害とわかり重度の症状が出ているときによく起こった症状です。もう我慢できなくて、ベッドに横になることができないんですよ。布団をはねのけて、部屋を這いずり回っていました。動くと冷静さを少し保てるんです。
・「私は今死ぬのかもしれない」「死んでしまう!」「どうしよう、気が狂う!」と本気で思う。
パニック発作が本当に強いときは、心底、上記のように頭が支配されました。本気で怖かったです。恐怖でしかなかった。頭の血管が切れるのが事前にわかったような感じです。「あ、死ぬわ、これ死ぬわ!」という。冗談だと思いますよね?でも、本当にそうなんですよ。これはパニック障害の経験者でしかわからない感覚だと思います。
・タクシーや電車・エレベーター・飛行機などの密室ですぐには逃げられない状況で、心臓がどきどきしてくる(予期不安)。「発作の前触れだ・・・」
私は、上記以外に美容院でずっと座っているのも、少し冷や汗を書く時期がありました。動けない、という状況もダメみたいですね。ここで、大抵の人はそういう状況を避けるように(回避行動)なるのですが・・・
私は性格上、みずから向かっていきました(笑)。
私の性格なんですが、つらい状況ほど、苦しいほど、それに立ち向かおうと体当たりしていくんですね。仕事などでも、嫌な状況、苦手な先輩や上司、には体当たりします。相当、精神を疲れさせますが、逃げることで自分が動けなくなるほうが、私には怖かったんです。
しかし、やはりひどいときは乗り物になるべく乗らない(自転車や徒歩にする、階段を使う)ようにしていました。
パニック障害としては3年前にほぼ治ったのですが、飛行機の着陸のときだけは、今でも軽い発作が起こります。日本国内は近いので大丈夫ですが、海外に行くときは、客室乗務員さんにヘルプを依頼して、座席を映らさせてもらったり、横にならせてもらったりご迷惑をおかけしてます。
薬のつらさ
パニック障害治療の第一選択薬は抗うつ薬です。そして第二に抗不安薬、三つ目は睡眠薬になります。一つずつ解説していきます。
・抗うつ薬(三環系抗うつ薬・SSRI・SNRI)
うつ病ではなくても、パニック障害の第一治療薬は抗うつ剤となります。これらの薬は飲めばすぐに効果が表れるわけではなく、飲み続けていくうちに徐々に体質が変わり、発作が起こらなくなるというものです。
・ベンゾジアゼピン系抗不安薬
これは心療内科や内科でもよく処方される薬で、不安を取り除く効果があり、飲んでから効き目が表れるのが早いです。精神科では抗うつ薬とセットで処方されることが多いようです。
・睡眠薬
神経症やうつ病は、睡眠障害につながることが多く、不眠などの症状への対処として睡眠薬が処方されます。
さて、私もパニック障害と診断されて、この3つの薬を処方されました。抗うつ剤はSNRIのサインバルタを、抗不安薬はソラナックスを、睡眠薬はレンドルミンでした。
まず、抗うつ薬ですが、副作用が必ずあり慣れるまでは症状が出ます。それは長期で飲んで止めるときにも表れます。私の場合、飲みだした頃は吐き気があり、不眠にもなりました。サインバルタは糖尿病の神経障害や、線維筋痛症・腰痛・関節炎などの痛みにも使われる薬で、副作用が少ないと言われています。
次に、抗不安薬ですが、ベンゾジアゼピン系は、本当によく効きます。2回言いますが、本当によく効きます。
効果がはっきりわかりますので、その名の通り、早い時間で安心がもたらされます。催眠効果・筋弛緩効果・抗けいれん効果があり、簡単にいうと、身体を強制的にリラックスさせ、眠気を即すというものですね。
私は神経が細いのか、仕事を長時間するだけで交感神経がおさまらないので、今でも抗不安薬は服用しつづけています。現在は副作用が少ないベンゾジアゼピン系ではない抗不安薬のセディールという薬を飲んでます。でも、ベンゾジアゼピン系のように即効性・わかりやすさはないですね。なので、急性期にはベンゾジアゼピン系がいいと思っています。
ただし、依存性が高いと言われており、長期服用は医師の指導が必要であり、止める場合も段階的減薬が求められます。
最後に、睡眠薬には種類はいろいろありますが、基本は強制的に眠らせる薬だと私は思っています。ただ、最近では新しいタイプの睡眠薬があり、メラトニン受容体作動薬のロゼレムや、オレキシン受容体拮抗薬のベルソムラなどがあります。
私は、睡眠薬のレンドルミンやマイスリーを試しましたが、一時的に睡眠はとれるものの、強制的に眠らされる脳の圧力を感じ、肌に合わないので結局止めてしまいました。不眠がひどいときに1週間ほど短期で使うこともありますが、私には抗不安薬の眠気作用が一番マイルドでいいと判断しています。
さて、冒頭の話に戻りますが、薬の何がツライかと言えば、抗うつ薬が人によっては大変ツライという印象です。現在ではSSRIが主流ですが、副作用がツライという声をよく効きます。人によって合う合わないもあり、いろいろ薬を変えながら一番効果の出るもの、その人に合ったものを探すというのが一般的です。
しかし、この段階がつらい。
私は、サインバルタで2週間くらいでほぼ何も感じなくなったので、ラッキーでしたが、いろんな薬を処方されて苦しんでる方はたくさんいます。
薬についての体験談などにはこの本がおすすめです⇓
精神科のくすりを語ろう 患者からみた官能的評価ハンドブック [ 熊木徹夫 ] | ||||
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そして、一番大変なのが薬を止めるときです。基本的に医師から段階的減薬を指示されるのですが、この段階で結構苦しみます。私は抗うつ薬を止めるのに、すごい眠気やだるさ、精神的落ち込み(今まで薬で精神が高揚されていた部分があるので)がありました。
また、抗うつ薬よりもつらかったのが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の減薬でした。あまりにもこの薬は効きすぎるので、それに体が慣れてしまって、止めるとなると、動悸や不安感の対処ができなくなり、よけいに過敏になってしまって、症状が悪化したように思ったものです。
そのくらいベンゾジアゼピン系というのは依存しやすい薬ということを身をもって経験しました。急性期以外では、ベンゾジアゼピン系を使用するなら、少量又は頓服で使うのが良いと私は思います。
現在、わたしはクロナゼパム(ランドセン)を0.5mgと少量で飲んでいます。ベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬で、むずむず脚症候群の治療薬として使われることが多いそうですが、パニック障害の抗不安作用にも使用されることがあるそうです。
睡眠薬はあくまで一時的に使うべきもので、私としては抗不安薬で睡眠作用が補えるのなら、それが一番良いと感じています。
さて、薬はつらいものというお話でしたが、私の体験談となってしまいました。
※薬については、個人の判断であり、勧めるものではありません。医師と相談の上、熟慮の上、納得した上で服用を開始又は減少させてくださいね。
仕事が続けれないつらさ
パニック障害を発症すると、仕事を続けることは難しいです。とはいっても、私は最初の発作からパニック障害とわかるまでに1年、パニック障害と判明してから2年半は、働きつづけました。しかし、その2年半に何度も職場に迷惑をかけたので、経営者からの信用を失い、とうとう休職をお願いした際には「復帰の時期がわからないなら、雇い続けられない」と宣告されました。
なので、もしパニック障害だと診断された方にはこう提案したい。
「会社や同僚に迷惑をかけてしまう前に、さっさと休職したほうがいいです」
もし、すぐに休業申請したとしても「え、なんの病気?」とか「休むくらいひどいもんなの?」とか理解してもらえなくてツライかもしれませんが、それは復帰してから挽回すればいい。
迷惑をかけまくって信用が失墜すると、その信用を取り戻すのは困難です。
そして、精神的にも身体的にも働いていると、治るものも治りません。経済的な事情などやむを得ない事情があっても、どうにか休んでほしいと私は思います。
私の治療が長引いたのは、パニック障害だとわかるまで放置しつづけたこと、パニック障害だとわかっても薬を嫌がって投薬治療を先延ばしにしたこと、休職しなかったことです。
おそらくさっさと休職していれば、私は今でもあの職場で働いていれたかもしれません。
さて、なぜ仕事を続けることが難しかったのか。それは広場恐怖のせいです。私はひどいときには電車に乗れませんでした。一駅ごとに我慢ならなくなって降車していたから。ですので、自転車通勤(片道40分)か、タクシーを使っていました(毎月出費がすごかった)。
すると、そのうちタクシーでも軽い発作で、倒れるように降車するようになりました。そして、また電車に戻し・・・どうにか、電車とタクシーは我慢して乗れるようになりましたが、一時期はそんな状態で、遅刻が多くなってしまいました。
次に、夜に発作が起こって朝まで苦しんだ日に、無気力なうつ状態になり、店長会議などをたまに休んでしまうようになりました。仕事は午後出社などして完全に休むことはなかったものの、会議は午前中でしたし、時間も短かったので、欠席となりました。
これが、経営者の信用を失った原因です。考えてみても当たり前ですが、会議を欠席する管理職なんていませんよね。私はその頃、パニック障害であることを誰にも話していませんでした。辞めるときに、傷病手当金の申請でやっと会社は私がなんの障害だったのか知ったと思います。
そう、話せばよかったのかもしれません。でも、その頃は「うつ病」などの精神疾患は偏見が大きく、精神に関わる病気は「働けない人」「困った人」のような印象をもたれると私は思っていましたし、自分が精神障碍者だと認めたくなかったので、言いませんでした。
それも失敗だったかもしれません。私はプライドが高かったのですね。
その後、私は正社員の仕事せずに、まずリハビリとしてアルバイトから仕事を再開することにしました。「もう大丈夫」だと、思えるまで、常勤の仕事はパニック障害患者には難しいと思います。
完治がわからない、再発がつらい
うつ病と同じようにパニック障害は、完治は難しい。長い道のりだと私は思っています。私がパニック障害を寛解(完治ではなく、ほぼ症状がなくなり、きにせずに生活していけること)した今でも、飛行機では軽い発作や予期不安は起こります。
このように、いつ完治したかという明確な判断ができない。ほとんど症状がなくなれば「治った」とほぼ思えますので、そこまでくれば安心ですが、治りかけの方はつらいでしょう。いつ再発するか、先が見えないことへの不安がつらいからです。
また、再発してしまうと(強い発作がまた起きてしまうと)、「また薬を飲まなければいけないのか」「この先どうなるんだろう」という不安が沸き起こるでしょう。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)と同じように、パニック発作は強い衝撃を記憶に埋め込みます。その衝撃は、長い間消えることはありません。
心は繊細です。人生で起こるいろんな辛さや苦悩を乗り越えるように、精神障害は長い目で見ていくこと、心を癒していくことが必要です。
あせらずに、少しずつ自分を癒していけば、障害は気にならなくなるくらいに回復します。それまでは、自分を許し、生活を整え、社会復帰していくことが必要です。
他人に理解されないことがツライ
私はパニック障害で闘病していた約5年間で、ほとんどの知人との交流を失いました。精神的に追い込まれていましたし、そんな状態で仕事をフルタイムで残業続きの毎日で、とても人に会えるような状況ではありませんでした。
ほぼ治ったと思えたとき、私が会っていたり連絡していたのは、両親と親友の3人だけでした。
「孤独だなあ」「一人ぼっちだなぁ」と思ったのは今でも覚えています。
そして、両親は私の障害について一度も聞いてきたことはありません。娘が精神障碍者だなんて認めたくはなかったのでしょう。親友は話を聞いてくれましたが、詳しくは話しませんでしたし、聞かれませんでした。話してもわかりませんものね。
私も詳しく言いたくなかったというのもあります。理解されないことは苦しいですし、偏見のある目で見られたくなかったからです。
辞めた仕事の上司や同僚は、私を責めはしませんでしたし、同情もせずに普通に接してくれましたが、理由については一度も聞いてきませんでした。
おそらく「精神的な何かだろう」ということは理解していて、でもそういうことは尋ねるべきじゃないという風潮は今でもあると思います。
精神障害を持つ人間は、いまや人から差別される時代ではありません。それでも理解を得ることは難しいですし、不思議な顔をされます。わからないから、そこについては濁されるというか、あまり聞かないでおこうという具合です。
それは、私たちにとって、孤独感を感じさせます。
たとえば、話を聞いて一緒に戦ってくれようとする人が一人でもいれば、それはとても心強いのではないかと思います。仕方のないことかもしれませんが、私には一緒に戦ってくれようとした人は一人もいませんでした。周りを恨んだりすることはありませんが、寂しかった。
たとえようもない孤独感は今でも一番心に残っていることです。
まとめ
これを読んでいる人はパニック障害の初期でしょうか、中期でしょうか。たとえば今苦しんでいるのなら、同じように苦しむ人、経験した人は多くいるのだと知ってください。
また、パニック障害は必ずよくなります。そのために必要なことはどんどん取り入れて試していってください。
投薬治療は個人の判断にゆだねられますが、生活や仕事を見直すこと、ストレスを軽減させる生き方を学ぶこと、呼吸法や運動など身体を使った行動療法など、これを機会に学べることはたくさんあります。
苦しむだけではなく、その先にある自分の変化、そして新しい生き方がある。
あきらめないでください。
私も、あなたもまだ生きていて、明日には違うことができる身体と精神をもっているのですから。
関連記事⇒突然しぬかもしれないと思った~パニック障害の体験~https://karen51.com/panic-disorder
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